ロボット作ろう:シェーキー製作記
僕のシェーキーも格好がついてきたところで、元祖Shakeyがどんな性能だったのかを確認しておきましょう。本来ならこれはプロジェクトを始める前にやっておくべきですが、さあやるぞでイキナリ英語のペーパーと格闘しなければならないのではモチベーション上がりませんよねえ。
今回はSRIのShakeyのページの下の方、ずらりと並んでいるペーパーを流し読みして、機械のスペックを探りました。その前に、Shakeyを紹介したフィルムがYouTubeにあがってましたのでご紹介します。長いし画質もよくないのですが、動くShakeyを見ることができる唯一のフィルムではないかと思います。これのオリジナルは前出のページにあるRealVideoファイルです。
"Take five"のリズムが心地よいですねえ。所々で聞こえる「ピロロ」という音は、jazzのアドリブではなく、ロボットとの通信に使われるFSKモデムの信号音のようです。
このフィルムのShakeyは頭が前方についている「後期タイプ」です。1967年の完成時には頭がロボットの旋回中心に取り付けられていました。レンジファインダーの計測結果をロボット座標上に持ち込みやすいようにするためだと思われます。しかし、画像認識での環境マッピングの研究が始まると、自分の足下が見えないのが問題となり、前部に移動したようです。
まずは外形諸元です。昔の投稿にあるように、この模型は写真から寸法を割り出し、1/3スケールで作ったつもりです。ペーパーには残念ながら図面はありませんでしたが、いくつか数字を拾うことが出来ました。それらが下記の数字です。
●駆動輪は直径8インチ(203mm)
●ベースの地上高は10インチ(254mm)
●アーム収納部(ベースと胴体の隙間)4インチ(101mm)
●胴体部分は標準の19インチラック(パネル取り付けねじ間が482mm)
これをもとに模型の寸法をあたると、ほぼ近い数字になっています。一番誤差が大きいのがベースの地上高で、一割ほど大きめになっていました。これはキャスターのサイズに合わせたためで、本当はもう少し低くしたかった部分です。セミスケールモデルとしては、いい線いっているのではないかと思います。
次は駆動部です。下記の諸元が読み取れました。
●ステッピングモーター(200ステップ/1回転)
●シャフトエンコーダ(50スリット4相 200パルス/1回転)
●減速比 1/4(タイミングベルト)
●距離分解能 1/32インチ(0.8mm)
結構距離分解能が高いですね。モーターにはステップ数と同じ分解能のシャフトエンコーダがあり、制御ロジックでクローズドループ制御されています。そのためだと思いますが、フィルムを見ると停止時にすこし行きつ戻りつしているのが見て取れます。駆動輪のトレッドも広いので旋回の精度も相当なものだと思われます。模型の精度も見直した方がいいかもしれません。
最後にレンジファインダーです。前の投稿でカメラの下の部分が投光部ではないかと書きました。上の箱が回転鏡と受光部と踏んだのですが、これは逆でした。箱の中に平行光線の投光部があり、その光を回転鏡でスキャンして、大きな開口部から投射、物体に当った際の反射光をカメラの下の受光部でキャッチしているようです。回転鏡がどの角度のときに光をキャッチしたかがわかれば、物体との距離がわかります。回転鏡は同期モーターで一定速度で回転しているので、基準位置からの時間で回転角度がわかるようになっています。
このレンジファインダーは0.5フィートから28フィート(15cm~8.4m)まで計測可能で、近距離(数フィート)では±0.2フィート以下(6cm)、最大距離付近では±1~2フィート(30~60cm)程度の精度があるそうです。今回採用したPSDのペアは、最大距離では見劣りするものの、これくらいの精度は期待できるのではないかと思います。
今回ペーパーにざっと目を通してみて、改めて注目したのが初期のペーパーに見られるアームについての記述です。これが開発前のイメージスケッチ、立派なアームがついているでしょう?

このアームはリトラクタブルで、使わないときには胴体とベースの間に収納されるようになっています。図面や見積もあり、それらによると開発費は6500ドルの予定でした。1ドル360円の時代ですから日本円にすると当時としては結構な金額です。アメリカでもそう安い金額ではなかったのではないでしょうか。そのせいか開発は見送られ、フィルムでご覧の通り、箱を押すための簡単なバーがベース部分に増設されました。
アームのついたShakey、ぜひとも見たかったですね。