【昔語り2】紙テープに未来を託そう
アキバ昔語り
今回はちょっと大物です。そう、あの紙テープ装置の登場です。科特隊の隊員や南部博士が目視で読んでいたアレです。
そもそも、紙テープに穴をパンチして情報を保存するさん孔テープは、コンピュータ時代以前から電信などの電気通信に使われていましたが、それは一部の専門家が知るところでしかありませんでした。しかし、コンピュータが時代の寵児として脚光を浴びはじめた1950年代ごろから、点滅するランプやラインプリンタとともにコンピュータのシンボルとしてメディアへの露出が増え、不規則に穴のあいたさん孔テープは、一般の人々にも未来的なイメージのアイコンとしてなじみの深いものとなっていったようです。
僕が覚えているのは駄菓子屋で売られていた「電信テープ」です。おそらくは電報かなんかで使用した紙テープ(もちろん何らかのデータがパンチされている!)を直径10センチくらいに巻き、どぶ漬けで赤や青に着色したものです。どうやって遊ぶかは子供に丸投げというものでした。それで積極的に遊んだ記憶はないのですが、読む真似をしたことはありました。「信夫山に怪獣出現!」とかですね。
70年代後半になっても紙テープはまだまだ現役でした。大学の研究室では自前のミニコンを持っているところもあり、そういうところでは、毎朝紙テープからイニシャルブートしていたそうです。
僕は会社勤めをしてから、電卓用マイコンを利用したソフト開発でとある電機メーカーに出向した際、初めて紙テープに触れました。当時の開発環境はメインフレームにリモート端末でアクセスしてアセンブラを使い、結果の紙テープとプリントアウトを電算室までもらいにいくというものでした。紙テープをミナトエレクトロニクスのPROMライターにかけて2716とかに書いてようやく試作機が動くという、まことにまどろっこしいもので、1日に7〜8回修正コードを出すのが精一杯でした。
それより少し前、学生時代にはマイコン用のBASICやアセンブラが紙テープで販売されていましたが、肝心のリーダパンチャーが高価で僕には縁のないものでした。ちなみに中古品でリーダが8K円くらい、パンチャーが18K円くらいだったと思います。これを手に入れたとしても、自作マイコンにあわせたインターフェイスやら電源やらを作らなければなりません。今と違ってインターネットで簡単に調べることもできませんから、アマチュアがいきなり挑戦してうまく使えたかどうかは疑問です。
とはいえ、一度は使ってみたいモノではあるわけで、以前ヤフオクで入手したNC用の紙テープ装置をパソコンに接続して動かしてみることにしました。
その紙テープ装置はRS232Cで加工機に接続するタイプですが、マニュアルが一切無く、どんなコマンドを送ればいいのかまったくわかりません。色々やってみましたが、うんともすんとも言いません。電源を入れてフィードボタンを押すとテープがフィードされるので機械としては一応動くみたいです… それではということで、もっと聞き分けのいい制御装置を新たに作ることにしました。まあなんとかなるっしょという軽い気持ちで始めたのですが、さすがそうは簡単にいかず、メカのオーバーホールも含めると1ヶ月近くの大プロジェクトになってしまいました。詳細をお話しするには紙幅も足りないし、あまり興味の無いところでしょうから、改造した中身の写真を示すにとどめます。
ベークの基板がPIC16F887で自作した制御装置です。もともとそこにあったオリジナルの基板はジャンク箱行き、電源部だけを使用しました。動作の様子は動画でご覧ください。
動くとさすがに壮観です。現在の機械にはない男らしさがありますね。
さて、これの使い道ですが… なにか昔のマイコンを作ってブートローダーを動かしてみましょうか? あまり前向きの使い方は思いつきません。
ただ、一説によると磁気媒体や光媒体よりも紙媒体の方が長期の保存に耐えるという話も聞きます。現代詩の愛好家でもある僕としては、千年先の究極的にディジタル化した人類のため、すばらしい詩作品を文字ではなく紙テープに託すというのもアリかなと思います。もっとも正倉院に保存してもらえれば、ですが。
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