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技術系よもやま話

2022年12月10日 (土)

スパイ映画に出てきそうな高一再生検波受信機

2020年の夏、ポータブル電池管ラジオに続いて作ったDX用小型ラジオのハナシです。

BCLコンポが意外と使えたので、ここは一つ本格的なBCLセットを作ってみようということに。BCLコンポでは高周波増幅プリセレクタにトランジスタ、スピーカーアンプに最新ICを使用していたのですが、ここは全真空管式で。早速バラックセットに組んでみました。

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左側が5678を使ったプリセレクタ、右側が5678と6418を2本使った再生検波ラジオです。主同調にバーニヤダイヤルもつけてみました。1-V-2という構成ですね。普通のヘッドホンで聴けるよう出力トランスが入ってます。テストの結果良好でセットに組むことにしました。

プリセレとラジオ本体はなるべく離したほうがいいのはわかってるんですが、やっぱり小さいセットがいいなと。最初のコンセプトは「キャンプに持って行ってBCLを楽しむ」ラジオでスタートしました。キャンプなんてやらないんですが(笑)ラジオとアンテナ、アースのワイヤなんかをひとまとめにできるようなキャビネットを企画しましたが、これが結構大変そうで。結局ラジオ本体をなるべく小型化することに。できてみると「50年代のソ連のスパイがアタッシュケースに忍ばせそうな」ラジオと相成りました。無骨さが東側っぽいですよね。

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主同調が36mmのバーニヤダイヤル、後ろのダイヤルがプリセレクタの同調つまみです。右手でバーニヤ、左手でプリセレを操作します。キャビネットの上についているのが検波段のバーアンテナ、白いコイルは追加したアンテナコイルです。プリセレのバーアンテナはキャビネット内部に収めてます。ヘッドホンジャックのそばにあるつまみは音量調整です。内部はこんな感じです。A電池は単三、B電池は23Aが2本で24Vです。2枚目がラジオ部、3枚目がプリセレです。

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組み立ててみると、確かにラジオとしては機能してるんですが、すぐにピーピー発振してしまうような代物で、実用になりそうもありません。プリセレとの間に中途半端なシールドを入れたりしましたがダメ、プリセレの実装をやり直すことに。写真はバラした様子です。

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ついでに回路を整理してデカップリングの値を変更しました。まあ何が効いたのかはわかりませんが、組み直したらかなりまともに。前の内部写真は組み直した状態です。

DX局の受信テストをしてみると、ヘッドホンではちょっとばかり音量不足の感が。手持ちのポタアンをつけてみるといい感じになります。

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そこでもう1球6418を追加することにしました。1-V-3ということになりますが、ゲインが低いので1-V-2相当くらいでしょうか。バーニヤダイヤルの裏側にスペースを見つけて実装しました。

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コレで完成です。音量ツマミをあげすぎると発振するという問題はありますが、自分で使う分には気になりません。DX局が安定して受信できるようになりました。めでたしめでたしです。ただし、セットに組む前より広々作ったバラックの方が安定だったように思います。やはりコンパクトに組み立てすぎで色々と干渉しているようです。この辺、僕の実力不足の感は否めません。

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最後に参考までに回路図を。バーアンテナは手持ちを使ってますが、アンテナコイルの巻いてある260PFバリコン対応なら大体のものが使えると思います。検波段に「ジュンフロン線20t」という書き込みがあります。これはバーアンテナの上にAWG32くらいのジュンフロン線を20回ほどアンテナコイルがわりに巻くことを意味しています。写真で白いコイルがそれです。

出力トランスSD-108はKURAでしか手に入らないようです。いつ無くなるかわかりませんから興味のある方は「とりあえず買っておく」ことをお勧めします。A電流が130mA、B電流1mA以下なので電池も長持ち、このセットで各地の民放を楽しみました。早く日が暮れる冬場だと夕方のローカル番組が聴けて楽しいですよ。

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2022年11月 8日 (火)

「超小型」電池管再生検波ポケットラジオ

2021年1月ごろに「超小型」電池管ラジオに挑戦したハナシです。

サブミニ管をいじっていると、どうしてもどれだけ小さいラジオが作れるかが気になります。ネットを検索してみても、やはり同じ気持ちの人は多いようで、ものすごく小型で、しかもしっかりした回路構成のセットを見ることができます。それらは優れた設計技術と工作技術があってのもので、僕にはちょっと真似できそうもありません。

そこで、できる範囲で「超小型」のセットを作ってみることに。回路は前回に紹介した2球再生検波ポータブルで。完成したのがこのポケットラジオです。

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セリアで購入した画鋲のプラケース(64X44X16mm)に、回路本体、B電池23Aが2本、A電池LR44を収めました。セラミックイヤホンのプラグがスイッチを兼ねていて、差し込むと電源が入る仕掛けです。

真空管は6418。普通のサブミニ管より一回り小型です。写真手前の5678と比べてみてください。小さいだけでなく、ヒーター電流も10mAと控えめで2本使っても20mA、十分とは言えませんがLR44(100mA/hくらい)でもA電池として1〜2時間は使えます。データシートには低周波用とありますが、ラジオ周波数くらいなら高周波でも問題ないようです。

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パッケージには保証期間12ヶ月で、保証期限が1985年の8月とありますから、この真空管が製造されたのは1984年の8月ということになります。1984年と言えば、日本でもパソコンが実用期を迎え、16bitマイコンが主流になりつつある頃です。その頃にサブミニ管が生産されていたとはちょっとした驚きですね。この白箱は軍用のパッケージだそうで、当時のアメリカ軍の軍装品に使用されていたようです。

試作を経て、回路はこうなりました。6418を2本、空中配線でモジュールに仕立てます。単三電池と比べてもこのサイズですが、マイコン時代の工作技術なら難なく組めると思います。参考のため裏表の写真を載せておきます。それから出力段の6418の負荷抵抗は、回路図のメモ書きにあるとおり47Kではなく22Kの方が音が大きくなります。

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バラックで動作テストを済ませたモジュールを加工したケースに組み込みます。配置はこんな感じです。

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VRは一回り小さい12.7mmのもの、バリコンも1.7cm角のものです。ヤフオクで見つけましたがaitendoでも扱ってるようです。多連バリコンですが最大容量が260PFくらいになるよう配線してます。バーアンテナは手持ちから。前の投稿で説明したように、アンテナコイルが巻いてあれば他のバーアンテナでも使えます。再生がかからなければ再生(アンテナ)コイルの線を入れ替え、再生のかかり具合は再生コイルに直列に入っているコンデンサ(220P)で変わります。

電池ケースは入らないのでリン青銅板(0.3くらい)で接点を作りました。イヤホンのコネクタはピンソケットで、ケース裏側に貼り付けてます。イヤホンを差し込むとA,B電池のマイナス側が接続になり電源が入る趣向です。

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肝心の使い勝手ですが・・・思ったとおりあまりよろしくありません。ボディエフェクトがバリバリで、同調を取ったらダイヤルから手が離せません。あるいは、手を離した状態にアタリをつけて同調操作をする必要があります。

感度自体は申し分なく、窓際や野外ではさほど強電界でもない当地でもローカル局を外部アンテナなしでガンガン受信できます。特別に小さく作らなくとも電池管ラジオ入門用としてもいいかしれません。A電池も単四とかにすれば無理がありません。まあ「作ってみた」セット、人に見せびらかしてナンボということでブログのネタに(笑。

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なお、この6418はかなり出回っているようです。調べるとポタアンなどがよくひっかかります。入手も楽でヤフオクでも安いものなら300円程度でも手に入るようです。また、真っ暗なところではヒーターがかすかに赤く光ってるのが見えて雰囲気が良いです。

2022年7月14日 (木)

サブミニ管5678と大型バーアンテナの再生検波ポータブル

BCL受信機のパロディとも言える「BCLコンポ」はオモチャとしては最高なんですが、実用的とは言えません。もっと気楽に使えるポータブルを作ってみようというわけで生まれたのがこのラジオです。2020年夏のことでした。

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ケースはセリアで購入した筆箱サイズのタッパー。サブミニ管5678(灰色の筒)を3本、0-V-2というわけです。140mmの大型バーアンテナで感度を稼ぎ、出力はヘッドホンで。B電圧は24Vです。

BCLコンポではアルミシャーシなのでバーアンテナを外部に出しました。シャーシ内ではシールドされてしまい、アンテナとしては機能しないばかりでなく、再生もグッと弱くしかかかりません。このセットではプラケースを使い、バーアンテナを内蔵、普通のポータブルラジオらしい外観にしました。

真空管回路はインピーダンスが高いので、プラケースにセットを組んだ場合、手などを近づけた時の容量変化、いわゆるボディエフェクトが発生します。そのためバリコンに手を近づけると同調周波数が変わってしまい、ダイヤルを摘んで回しているときは同調が取れるが、手を離すとずれてしまうということになります。そこで、上右の写真のように、バリコン、回路部分とVRなどの操作パネルに0.2mm位のブリキ板を敷いて、シールドしています。もちろんこのブリキ板はGNDに接続してあります。この板もセリアの工作材料コーナーで見つけたものです。効果はバッチリでした。

実装の様子です。バーアンテナの付近はシールドしていません。ここをシールドするとアンテナとして機能しなくなります。

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回路のメモです(あくまでも製作時のメモです。定数などはほぼこの値だと思いますが、スイッチ周りなどはセットとは異なっています)。最初は左のメモにある2球ラジオのバラックを製作、BCLコンポと同じくICアンプでヘッドホンを鳴らそうかと思いましたが、やはりオール真空管でということで、右の回路を追加しました。赤枠の抵抗をAカーブのVRにして音量調整しています。A電池アルカリ単三で10時間くらい、B電池23A二つで50時間以上は使えると思います。

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部品の補足です。サブミニ管5678はヒーターの3番ピンがシールド(灰色のコーティング)に接続されてるので、回路図の3と5を入れ替えた方がいいでしょう(回路メモにもそういう書き込みをしてますね)。この真空管は、2022年7月現在、ヤフオクに多く出品されています。「5678」で検索をかけてみてください。バーアンテナはスーパー用のAR-140S、KURAやヤフオクで入手できます。組み合わせるバリコンはスーパー用の150P+70P2連の片側を使います。出力トランスSD-108は10K:8Ωという真空管規格でサイズはSTトランスサイズという変わり種。いまのところKURAでしか手に入らないようです。

元ネタは50年代末の「模型とラジオ」に掲載されていた、少年向けポータブルの回路です。当時はポピュラーな構成だったようで、同工異曲な製作記事がいくつもあります。

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使ってみると、さすがにスーパーには敵いませんが、大型バーアンテナの効果絶大で、窓際ならば結構な感度でローカル局が入感します。このように使えばボディエフェクトもほとんどありません。音量音質とも良好で、さすが1球追加しただけのことはあります。

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窓際から離れて、2mほど奥まったリビングの「定位置」で「ラジオ深夜便」を聞いてみましたが、さすがにちょっと電波が弱いようでした。電波が弱いとかなり同調がシビアです。同調ツマミと再生ツマミを細かく調整しないと、再生検波特有のボイスチェンジャーをかけたような音声になってしまいます。減速機構かバンドスプレッドが欲しいところです。

おおむね、初期の目標は達成ということで、めでたく本プロジェクトは終了となりました。今でもローカル線の待ち合わせ時間がありそうなときなどは、カバンに忍ばせて、ホームのベンチで聴くことがあります。変なやつだと思われているのでしょうが(笑)

2022年7月 1日 (金)

電池管マイブーム到来

前の投稿で本格的(かなあ)に電池管をいじってみて、興味が再燃しました。実はリタイアしたらまた真空管セットをこしらえてみたい、それも小中学生が作るようなセットを、と考えていました。ところが、実際に作ってみると、この投稿のように電灯線電源のセット(特にラジオ)は他のコンセントに差したスイッチング電源からのノイズに敏感で、作っても気楽に楽しめない、という状態でした。その点、電池管セットはコンセントに接続しないので、その影響は少なそう、気楽に楽しめるのではないでしょうか。

さらに、日本各地の民放AMラジオ局が近い将来停波の可能性があるという報道もあり、これは早いうちに始めないとという気持ちも強くなりました。

そこで2020年の春に、電子カメを作った時に集めた電池管の中から、3A5というMTサイズの双三極管でバラックラジオを組んでみました。3A5を使ったのは1球で0-V-1が構成できるからです。どうせ作るならコンパクトなセットを作りたいという色気もありまして。

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バーアンテナのアンテナコイル部を再生コイルとした再生検波です。最適設計ではないでしょうが再生はスムーズにかかりました。ただ無信号時に再生VRを回しても0-V-2のようにギャーと発振しません。放送を受信して初めてぴゅーと発振する感じです。検波段が三極管でゲインが低いせいでしょうか。もっとも再生のかかり具合は問題ないようなのでそのまま使っています。また、思った通り電灯線からのノイズはありません。そのためS/Nがいいので弱い電波も明瞭です。まあなんとかなりそうということで、小型のセットにまとめました。

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手のひらに乗るくらいのアルミケースに真空管ラジオらしく組み立てました。23Aが2本でB電圧24V、ヒーターは単三1本です。黄色いピンジャックには外部アンテナとアースを接続します。バーアンテナですから、窓際ならローカル局はアンテナ接続なしで受信できますが、感度は1石レフレックスより劣るようです。ただ、再生検波なので選択度はかなりなもので、減速機構なしのダイヤルではチューニングが難しいです。

面白いのは、電池管のカソードはフィラメントそのものなので、セットにショックを与えると、フィラメントが振動し、ちょうどエレキギターの弦のような感じでポーンという音がイヤホンから出ることです。以前持っていた電池管ポータブルもそうでしたが、メカ的な工夫が施してあったせいか、このセットの方が顕著な感じです。

ラジオ工作用に設置したアンテナはベランダに張った7mほどのロングワイヤ、地上高7mくらいで東西指向性です。アースはベランダの手すりに接続しました。これくらいの環境を整えてやると強力なローカル局ばかりではなく、夜間には遠距離局と思しき信号がかすかに入感します。こうなると、もう少しゲインを稼ぎたい欲が出てきました。そこで作ったのがこのアンプスピーカーです。

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最初はここも真空管でと思いましたが、どうしてもセットが大きくなってしまうので諦めました。素直に秋月電子で入手したBU7150を使って電池1本でヘッドホンを鳴らします。スピーカーはおまけで、セットをそれらしくするためです。1.5Vでは大して大きな音は出ません。

このアンプの効果は絶大で、ヘッドホンを使うと、何か言ってるようだなという程度だった放送の内容が聞き取れるようになりました。当地栃木でラジオ大阪やHBC(北海道)などがかろうじて受信できたのはちょっとした驚きでした。

こうなるとさらに欲がでます。もう少し安定に受信したいというわけで、プリセレクタを作ってみました。

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プリセレクタとは同調型の高周波増幅器です。中身は右のようにトランジスタ1石の簡単な構成です。左のピンジャックにアンテナとアースを接続、右のピンジャックでラジオのアンテナアースと接続します。

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もうこれは立派な受信システム。というわけで「BCLコンポ」と命名しました(笑)。プリセレのおかげで入感の弱い局にチューニングするのがやりやすくなりました。とはいえ、操作は実にデリケートで、ラジオのチューニング、プリセレのチューニング、再生VRを事細かに調整しないといけません。プリセレをオンにしているとブーと大きな音で発振することもあり、ヘッドホンをしているとびっくりします。ラジオとしては失格ですが、おもちゃとしては、意外に遠くの局が受かることもあるので面白いと思います。

最後に試作機のラジオ本体、プリセレの回路図メモを公開します。ラジオ本体はあまりお勧めできません。単体での感度がよくないし、再生VRを回すと、受信周波数が若干かわるといった本質的な問題もあります。(ただ、これは慣れてくるとバンドスプレッドみたいに使えて便利なこともあります)

また、アンテナ回路は回路図のように100PFで切ってグリッドに繋いでいるのではなく、写真のようにコイルの上にAWG30のジュンフロン線(赤いワイヤ)を20ターンほど巻き付けてアンテナコイルとしています。バーアンテナはいずれもSL-45GTですが、現在入手可能なSL-41GTで代用できます。また、他のバーアンテナでもアンテナコイルの巻いてあるものなら使えるとおもいます。

プリセレの出力にある100PFの結合コンデンサは次段のラジオ次第で調整の必要ありです。再生がかからなくなったりしたら小さくしてみてください。なお、試作過程で定数などは若干変更しているかもしれません。

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さて、これでセットは完成、いつもと同じくお蔵入り・・・のはずでしたが、作ってみるとなかなか面白く、どうやらマイブームの始まりのようです。すぐに「もっといい」再生検波ラジオが作りたくなってしまいました。その話はまた別の投稿で。

2022年6月27日 (月)

グレイ・ウォルターの真空管式電子カメを作ってみる

グレイ・ウォルターのMachina Speculatrixを当時の回路に近い形で作ってみました。「電子カメ」とも言われるごく初期の、そしてエポックメイキングな自律ロボットです。

以前の投稿でMachina Speculatrixについては簡単に説明しています。この投稿の最初の部分です。

僕は、中学生の時に子供向け科学書で「電子カメ」を知り、ぜひ作ってみたいと思いました。やがて高校生の時に、動作や回路の解説が掲載されてるCybernetic Machinesという洋書を丸善で見つけ、ずいぶん高かった(4K円くらい)けど思い切って購入、その情報をもとに、cdsとトランジスタでレプリカを作りました。

それは食パンケースをボディにし、マブチモーターを動力源にしたもので、一応動作しました。当時は3畳間の下宿暮らし、動かす場所も限られてたので、スポーツバッグに潜ませて学校に早出し、他の生徒が来る前に教室でテストしたりしました(笑)

それから40余年、光電管が手に入ったのを機に、オリジナルに近い電子カメの製作に着手しました。2018年の夏のことです。

中身を解説するとなると、長編投稿になってしまうので、今回は簡単に紹介するにとどめます。まずは外観。ボディは百均セリアのミニ米櫃。3枚目の写真はオリジナルの中身です。よく似ているでしょう。オリジナルよりはだいぶ小さいと思います。

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光電管カバーを外したところ。測定器などに使われた真空光電管PV13。2本の電池管は3Q4です。

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車体裏の駆動機構と電源。B電池として23Aが4本、A電池と動力、光電管用は6Vのシールドバッテリ。

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動画です。窓際が明るいのでそちらへ向かって進行します。後部で点滅している電球は、二つあるリレーのインジケータです。障害物に当たった時に交互に点滅するのは、2本の真空管をマルチバイブレータとして動作させ、旋回と駆動を交互に行って脱出行動としているからです。

 

カットアンドトライで動くようになった回路。残念ながら、この回路に必要なコイル抵抗10Kくらいの高感度リレーが入手できず、FETと通常の6Vリレーを組み合わせて使ってます。この点が心残り。いずれリレーを探して完全版にしたいと考えてます。

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これまでの投稿にあるように、小中学生の頃真空管セットは作りましたが、よく理解していたわけではないので、あらためてやってみると動作点とかの感どころが掴めません。この回路も色々とツッコミどころがあります。いずれ別の投稿で詳しく説明したいと考えてます。

2022年5月 8日 (日)

昔の深夜放送をラジオで聴くには

「深夜放送」という言葉は、単なる「夜中のラジオ番組」ではなく、「深夜の若者向け生放送番組」を意味しています。もう死語なんだろうなと思ってましたが、まだ「オールナイトニッポン」は放送中で、まだまだ現役の言葉のようです。もっとも最近はヤングだけのものではなく「ラジオ深夜便」のおかげでシニア層の愛好家も多いようですが。

1960年代、娯楽のチャンピオンの座をテレビに奪われた感のあるラジオですが、トランジスタの普及で価格が下がったこともあり、一人に一台のパーソナルメディアとして定着しつつありました。それを加速したのが、60年代末から始まった「深夜放送」のブームでした。当時、中高生(少なくとも高校生)は夕食後、机に向かって勉強するのが普通で(今も?)、勉強中「ながら聴取」するのが深夜放送だったのです。1970年代には各局が看板番組を持ち、パーソナリティの人気はスター並みという黄金時代を迎えました。

僕は1970年に中学入学、1980年に大学卒業なので、まさに深夜放送とともに青春を送った世代と言えるでしょう。本格的に聴き始めたのは高校受験を控えた1972年だったと思います。最初のうちは愛川欽也さんのパックインミュージック、その後ナッチャコパック一本槍に。「ながら聴取」とは名ばかりで、放送中は勉強そっちのけで聴き入っていました。当時は金曜1〜3時で、流石に全部聴くと翌日眠くて大変でした。本当になにやってんだかですね。

そういう世代向けに、近年、当時の放送そのままのCD商品が発売されています。生放送ですから局にテープなどあるはずもなく、熱心なファンが録音したテープからマスタリングしたものです。下の写真は「ナッチャコパック」の1972〜74年くらいの放送からピックアップしたCDです。夢中になってた時期とピタリ重なるので、僕のために商品化してくれたのではないかと思えるほどです。

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これをオーディオセットで聴いてみたのですが、ちょっと違和感が。もともとラジオの音声を録音したものではあるのですが、マスタリングの処理か、あるいはオーディオセットの性能が良すぎるのか、ともかくラジオで聴いてる気分になれません。ならば、本当にラジオから音が出るようにしてしまえば、あの頃の気分に浸れるのではないかということで、試作を始めました。

CDプレーヤーやスマホのヘッドホン出力を、AMラジオに飛ばすワイヤレスマイクを作ればいいわけです。最初の試作機はトランジスタ2石、トランス変調で高音質を狙ったロッドアンテナ付きのセットでした。送信機は部屋の隅にでも設置し、作業机のラジオで放送を聴こうというわけです。作ってみると、電波法の範囲では、キレイに受信できる距離が1mくらいまでで、結局、作業机の上に送信機も置かなければなりませんでした。セットが大きいので結構邪魔です。

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そこで、送信機のごく近くにラジオを置くスタイルのセットを作ってみました。この動画のように使います。

100均で購入した写真立ての裏側に1石の送信機を貼り付けたものです。CDプレーヤーなどを接続し、ラジオをごく近くに置いて使います。これなら机に置いても邪魔になりません。動画ではスマホを繋いでyoutubeにあるナッチャコパックの録音を放送しています。

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本機の回路図です。泉弘志さんの「1石ワイヤレスマイク」の回路をヘッドホンから入力できるよう変更しました。

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こちらが泉弘志さんオリジナルの回路です。

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オリジナルの発振コイルはオールドファンにはお馴染みのNo.88コイルですが、現在は入手できません。代用品としてスーパー用の局発コイルを使いました。インダクタンスがほぼ同じなのでそのまま使えます。まだマルツオンラインKURAネットショップなどで購入可能です。ただし、取り付け時に足を曲げると断線しやすいので、曲げずに使ったほうがいいでしょう。また、この回路ではタップは使ってないので1、3ピンは反対に接続しても大丈夫です。

トランジスタはオリジナルどおりシルクハット型の2SC372ですが、これはレトロ趣味で使っているだけで、お馴染みの2SC1815で代用できます。これもデスコンですが、今でも秋月電子などで互換品が入手できます。2SC372もヤフオクにはよく出ています。

入力ボリュームはAカーブのもの。変調レベルがシビアなのでBカーブだと調整が大変です。手持ちに50KAがたくさんあったのでこれを使いました。他の値でも大丈夫だと思います。手持ちを試してみてください。CDプレーヤーやスマホの音量は大きめにして、本機のボリュームで音が歪まないよう調整します。

電源は100均のアルカリ006Pです。電流は無信号時に3mAくらいなので100時間以上使える計算です。

平ラグに回路を組み、写真立ての裏にホットメルトで固定しました。緑のワイヤはアンテナ線です。周波数は低く、電気的に干渉する部品もないので、部品配置は比較的自由です。普通にユニバーサル基板でも問題ないでしょう。

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発振コイルのコアをドライバで回すことで周波数の調整ができます。試作機では調整範囲が1100-1400KHzでした。当地では1500KHzくらいにローカル局があるのでこの辺にしています。周波数はコイルとC4,C5の容量で決まるので、150PFを100PFにすれば周波数を上にずらせます。在京民放局が入るエリアではもう少し上の方がいいでしょう。

夜中にこのセットでぼーっとラジオを聴いていると、70年代にタイムスリップしたような不思議な気分になることがあります。大袈裟に言えば、一種のバーチャルリアリティの装置ということもできるのではないかと思います(笑)

2022年1月13日 (木)

すごいけど残念なSlamtec Mapper M1M1(おしまい)

と、いうわけで、このモジュールについては深追いしないことにしました。

微弱化したあとでいくつか動画を撮りましたので、公開しておきます。

リビングから隣の部屋へ移動させている様子です。車輪からのオドメトリがいらないので、キャタピラがスリップしても平気です。ルンバベースだとマップとの照合が狂って戻ってこれなくなってしまいます。

タミヤの1/25スケールの戦車なら乗っけるだけで自律走行戦車も作れそうです。模型好きとしては興味深いですね。

2022年1月 3日 (月)

すごいけど残念なSlamtec Mapper M1M1(その2)

ROSで自作移動ロボットを作るには大変便利なmapperですが、残念なことがあります。それもかなり本質的な部分で。

それは次の二つです。

1:WiFiのAPとして動作させないといけない。

2:WiFiに日本の技適どころかFCCの番号もなく、OFFにもできない。

まず1の件。このユニットはWiFiのAPモードとして動作し、SSIDにアクセスすることでマップ情報や推定自己位置を取得できます。これはおそらくスマホで簡単に使えるようにするためだと思います。これはこれでいいのですが、これ以外の接続方法がありません。つまり家庭内のWiFiルータにインフラストラクチャモードで接続することができません。

これだと、このユニットで完結しているならよいのですが、クラウド連動などインターネット接続が必要な機器には使えません。スマホで簡単に地図を作るというような用途に限られるようです。もちろんROSで使うときもドライバを入れたubuntuパソコンをこのユニットのSSIDにクライアントとして接続する必要があります。

イーサネットが接続できますが、それも同様です。他のルーターとの共用は簡単にはできません。

もっと残念なのは2です。本体のどこにも無線関係の認証情報が見つけられませんでした。せめてFCCとかが通っていれば、特例申請をして一定期間は合法的に使えるのですが。あくまでもkit扱いということのようです。

というわけで前回の動画は非合法の実験です。鉄筋コンクリートのマンションをシールドボックスに見立ててはいますが、本来はダメです。イーサネットで接続もできるので、WiFiをオフにできればよいのですがそれもできません。

このままではダメなので、改造してWiFiを無許可で使える微弱レベルに落としました。

ユニットのWiFiモジュールから細い同軸でプリントアンテナに接続になってるので、まずこれを外します。これでも5メートルほど電波が飛びます。

つぎにユニット全体をアルミケースに収めました。こんな感じです。

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これでも3メートル近く電波が飛びます。「微弱」とは言いにくいです。

そこで、こんなふうに基板をアルミ箔でシールドしました。

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ここまでやるとようやく1メートルほどしか電波が飛ばなくなりました。測定したわけではないので、これで微弱化と言われるとあれなんですが、以前電力を食わない「微弱」wifiの持ち込みがあり、それがこんな感じなのでよしとしました。

これでは接続できないので、技適がちゃんととれてるミニWiFiAPを購入し、イーサネットでmapperと接続しました。バンドで留めてる白い箱がそれです。このAPに接続することで、合法的にmapperが使えるわけです。

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この状態で、マップのロードセーブやマップ更新のコントロールなどを試しましたが、結局これはいろいろな理由でお蔵入りになりました。最も大きかったのは安定供給が難しそうということです。アマチュアにとっては便利な部品ですが、群雄割拠のロボットベンチャー(?)にとって、コア技術をこれに頼るということは考えにくく、将来性はなさそうに思います。

未来感のある面白い部品でしたが、ちょっと残念です。

2021年12月27日 (月)

すごいけど残念なSlamtec Mapper M1M1(その1)

初めてレーザースキャナを使ったのはもうずいぶん前のことです。ヤフオクで北陽の測域センサURG-04LXを入手しました。当時10数万円もしていたのを9k円ほどで入手できたのですから、ずいぶんとラッキーでした。しかも新品同様のコンデションで。最近はメーカーも増え、10k円程度の製品も見かけるようになりました。

そういうメーカーの一社、Slamtecが昨年からちょっと変わり種のスキャナを販売しています。Mapper M1M1 kitというモデルです。おなじみseeedが販売元のようです。下のリンクで概要がわかります。

https://wiki.seeedstudio.com/jp/Slamtec-Mapper-M1M1-ToF-20M/

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その名の通り、SLAMを搭載したボードとスキャナを組み合わせたマップ作成マシンで、この部品だけで、マップの作成、マップを利用した自己位置の推定を行うという、移動ロボットの主要機能が実現してしまいます。その上、オドメトリを与える必要なく、これを手に持ってあちこち歩き回るだけで地図ができるという寸法です。

また、ROSへの対応として、scan、map、odomのトピックを生成します。move_baseを使えば自律移動ロボットの基本部分を構築できるわけです。

これはテストしないといけないということで、2020年の秋頃、こんなロボットを作りました。

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アマゾンでよく見かけるタンクシャーシに百均の木箱を乗せ、一番上にmapperを搭載。ROS(kinetic)を入れたラップトップからブルーツースでラジコン操縦できるよう構成してあります。mapperからの情報はwifi経由でラップトップに。move_baseを使った自律移動をさせてみました。

これがその様子です。猫柄のマットの上に、餌に見立てた乾電池(笑)があり、そこへ自律移動させてます。目的地の指定はおなじみのrviz。ポイントは途中でロボットを持ち上げて別の場所に移動させても、ちゃんとそこからパスを切り直してマットにゴールするところです。

これはmapperに搭載されたSLAMが、マップからの情報だけではなく、IMUからの情報(おそらく)を元に常に自己位置の推定を行っているからでしょう。以前遊んでいたroombaのように、駆動輪からのオドメトリの比重が高いモデルでは、このようにキッドナップすると自己位置を見失います。

このようにROSで使うには面白い部品なんですが、残念なところも。次回はそれについて書きます。

2021年12月22日 (水)

21世紀の「コンピューターカー」

1969年頃のおもちゃで、コンピューターカーというのがありました。

ギザギザのついたカードを車に差し込むと、ステアリングやギアを自動調整して、一定のコースを走るおもちゃです。

写真の手前にあるのがそれで、これはビュィックのセンチュリークルーザーというドリームカーをかたどってます。

その後ろにあるのが2018年に作った「21世紀版コンピューターカー」です。

いぜん、韓国製のジャイロコンパスと測距輪で決められたコースをナビゲーションできる移動ロボットを作りましたが、今回のものは、それをかなり簡素化し、おもちゃっぽくしたものです。

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シャーシはアマゾンで売ってたロボットベースで1k円もしないもの、ジャイロコンパスはBNO055という絶対方位モード付きのIMUで、現在3K円ほどで評価ボードが手に入るものです。IMUの加速度センサを使って障害物にぶつかったこともわかるようになっています。主な部品はマイコンとIMUだけです。

動作の様子。ブリキロボットまで往復のミッションですが、途中でチッチとサリーの漫画本にぶつかり、コースを変更して迂回してるのがわかるでしょう。コースはウェイポイントをXY座標で与えることで設定します。障害物に当たると、迂回のウェイポイントがコースに追加されるしくみです。

もちろん、この実験での迂回のウェイポイントは決め打ちで、いつでも上手く迂回するわけではないですが。

車輪エンコーダも測距輪もありません。動作時間で移動距離を推定しています。最低限のオドメトリです。

BNO055はその後、別の製品で量産に使いましたが、なかなか使い勝手の良い部品だと思います。

ただし!アマゾンで売ってるBNO055の基板ユニットには結構な確率で不良品があるようです。10個くらい試したと思いますが、一つは水晶を有効にすると止まってしまい、もう一つはそもそも通信ができませんでした。ピン数が多いリードなしのデバイスなのでハンダ不良と思われます。使ってみるときは、作ったソフトを疑う前に、まず取り替えてみることをお勧めします。

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